育てる環境が無いからと、育つ方の採用を見送っていませんか?
- 代表
- 2022年10月21日
- 読了時間: 3分
以前に、あるお客様の最終選考に同席していた時に、「良い候補者の方だけど、育てる余裕が無いので、採用は見送ろうと思う」と言われたことがありました。現場を預かる役員の方と、社長が相談して決めたことでした。
通常私たちは出来る限りの意思決定サポートは行うものの、人を一人採用するということは、会社にとって、そして候補者の方の人生がかかった大きな決断であり、経営者の方の重大な決断は尊重されるべきものという考えを持っています。
ただし、稀に意見させて頂く場合があり、今回はその稀な事例のご紹介です。
確かに現業も忙しく、また職人肌の社員が多い場合、後任育成に向いた方がいないという悩みを経営者の方から良くご相談いただきます。だからこそ、育成の出来る経験者を採用して、その後で、育成できる環境を作れたら、未経験などの若手を採用していきたい、とおっしゃるのはとてもわかります。ただ・・・・組織にマッチし、かつ育成の出来る経験者採用というのは、現在の採用環境ではとてもハードルが高く、また入社後はまず育成よりも実務的に立ち上がってもらう方が優先されるため、時間もかかります。結果として、なかなか若手の採用も進まないため、組織の若返りや強化が進まず、停滞感が出てしまう事態につながってしまいます。
そんなときは少し視点を変えてみてはいかがでしょうか?
「育てる」のではなく「育つ」のだと。
かくいう、自分もマネジメントを長年経験してきて、多くの若手社員と仕事をしてきました。そして、今では頼もしく1人前に仕事をしている彼らを見ると本当に嬉しくなるのですが、「私が育てた」という実感はありません。仕事を任せていく中で、彼ら彼女らが悩んだり困ったりしながら自ら「育った」のであり、私はその手助けを少ししだだけに過ぎません(ほとんど手助けを必要としなかった人もいます)。すべての若手社員が自主的に育つわけではありませんが、一定数自分で育っていく力をもった方がいます。
このブログの初めに書いた候補者の方も、何万人もの方を見てきた私達から見ると、「育つ」力を持った方でした。そのため、僭越ながら社長に「無理に育てなくても、最初は雑用からでも、おてこでも、多少ほっといても、大丈夫です。育てるのではなく、ある程度自分で育っていきますから、採用してみませんか?」と申し上げました。社長の決断に意見するのですから、私たちも大きな覚悟を持って、緊張しながら、でも社長のためになると信じての発言です。
社長は少し悩んだ後で、半信半疑の表情の中、そこまで言うなら・・・・と信じて採用してくださいました。
その彼は、入社後、現場はあわただしく、落ち着いた教育も無い中で、「あれやれ、これやれ」と言われたことをとにかく必死にこなしていたそうです。現場も、あまり口数が多くなく、やや動きがゆっくりな彼を見て、心配したり、声を荒げる場面もあったそうですが、だんだん月日が経過して周りが見えてくると、堅実な動きに信用を増していったそうです。
3年が経過するころには、その職場の中核として同僚からもお客様からの信頼も厚く、でも変わらず口数少なく、派手ではないですが安定した活躍をしてくれています。
当初入社に反対した役員の方からは「彼みたいな人がいいんだよ!」という嬉しい言葉を頂き、社長と二人で、当時のことを思い出してニヤリと笑い合いました。
育てる環境が無いといって、採用を止めてしまうのはもったいないなと感じます。もちろん、全ての方が自主的に育つわけではありませんが、育つ方を見抜き、採用できるようになると、会社にとっても採用できる候補者が広がり組織づくりがとても楽になります。
一度検討されてはいかがでしょうか?
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